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2006.01.04

復路

今年の箱根駅伝は「感動」の一言。全てをこの一言で表すのは物足りないくらいの大内容だった。それほど素晴らしかった。
泣いた。

昨日の大雨がウソのように、箱根は透き通るような青空。
往路5区、今井の激走により往路優勝を果たした順大。惜しくもそれに及ばなかった、箱根5連覇を目指す王者駒大。 それを追いかける山梨学院大、中大、日大。6区芦ノ湖スタート時のタイム差から見ても復路はこの5校にしぼられたと思われた。

6区、山くだり。順大は堅い走りで首位をキープ、7区に襷を繋げる。スタート時3位だった山梨学院大は、 約20秒差だった前を行く駒大に追いつき2位の座を奪う。
7区、湘南の浜風を東に受けながら平塚まで走る21.3kmのコース。駒大、安西をスピードで上回る中大、森がここで前に出て、 さらにはその前を行く山梨学院大までもをとらえた。

ここでTV中継はシード権獲得争いで熾烈を極める早大、東海大、法政大、大東大の争いに切り替わる。
だが、ここで撮るべきは順位をじりじりと上げてきている亜細亜大だったのだ。亜細亜大は、最初で最後の箱根を走る4年生、 綿引の走りでこの7区、7位から5位に順位を上げていた。

8区、ドラマはここで待っていた。

順大4年、難波祐樹。
平塚中継所で2分53秒だった2位との差は藤沢では3分25秒にまで開き、完璧な独走体勢。
「フォームもいいしストライドもよく伸びている」とTV解説者もアナウンサーも順大優位と捉えていた。

が、しかし...!!

 

「大変です!!」
中継車アナウンサーの声で誰もが息を呑む。
映像が切り替わると、そこには次の中継所まで5kmのところで、どう見ても様子のおかしい難波の姿があった。

「どうした!!?」
TVの前でオレは叫んだ。
難波は、すでに目もうつろ、今にも対向車線にはみ出せんばかりの位置で走っている。と思ったら今度は歩道寄り、 観客の目の前を今にも歩きそうな転びそうな感じで走っていた。

「どうしたことでしょう!?」
「難波、ここでまさかのブレーキ!!」
アナウンサーが言う。

「脱水ですね」
解説者が言った。

オレが覚えているかつての箱根駅伝で脱水症状になった選手のことがバババッと目の前によぎる。
第80回大会の大東大5区、馬場。
第77回大会の帝京5区、飛松。
そして何よりも、1991年第67回大会、2区を走った早稲田、櫛部のあの光景......その走りはまるで生気を感じなかった。

難波の走りはそれに近いものがあり、今まさに危機迫る状態。
意識の中で彼はただひたすら走り、次のランナーに襷を繋ぐことだけを考えていたんだろう。だから、 そんな状態になりながらも身体が動き続け走ることをやめなかったんだ。

オレは沿道の観戦者に対し、
「このやろー!!もっと応援してやれよ!!バカタレどもがー!!」
と、怒りの矛先を間違えていた。TV観戦者の声を選手に届けることはできないし、でも何かしてあげたい、 しなきゃいけないという気持ちがそういう風になってしまっていた。

難波のその状況を見た監督は車から降りてきて、水を与え、意識の全回復はしなかったけど、 それでもなんとか襷にかける思いが難波を突き動かし、 彼は中継所までの5kmという長い長い道のりを踏破した。
オレはこのとき、人間の熱き魂を見た気がする。

さてレースは、この順大のブレーキをよそ目に進んでいた。
順大のすぐ後ろを走っていた駒大がトップに躍り出て、「終わってみれば駒大だった」 ということばかりを連想させる展開。

が、駒大包囲網はまだ終いえていなかったのだ!!!

これまでTVに映らないところで着実に順位を上げてきた亜細亜大。
ついに9区で駒大に並ぶ!!

なんと、意外な伏兵が...!!
亜細亜大、9区山下、駒大の平野を一気に突き放す。
平野、懸命の疾走も及ばず差は開くばかり。

そして10区、亜細亜大のアンカー岡田は淡々とした走りで後続に差を詰めさせなかった。

勝負あり!!!

駒澤大学の5連覇を阻止したのは、なんと初優勝の亜細亜大学。
誰が予想できたであろうか。オレも一切注目していなかった。
中央、東海......今回は何か違ったので、きっとやってくれると思ったのだが、そこは駒沢包囲網とか言われるプレッシャーと、 ランナー全体的な力量が、さらにバランスの良かった亜細亜にかなわなかったというところか。

亜細亜は予選会では上位に食い込む実力がありながら、しかし箱根本戦では下位に終わるという結果。 これまで日の目を見ることなく悔し涙を飲んできた。
今大会、他校にさまざまなアクシデントが起こる中、堅実に自分の居所を見据えたこと、レース全体を見る眼と、 そして選手ひとりひとりの努力の積み重ねがこういった結果に出てきたんだと思う。
今回は追う身だったが次回は自分達が追われる身。一層厳しい戦いが予想されるが、今回の経験を糧にまた箱根でその実力を魅せてもらいたい。



.........さぁ、正月も終わった。
これから1年、オレも次回の箱根まで頑張ろう。

※おまけ。第一京浜蒲田付近で撮影。

アンカーは走る!!

最後まで......!!

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